鮪のシマハラ

「鮪のシマハラ」を支える仲間たち② 松木茂美

社長の島原さんとは、上海でご縁がありました。外灘という夜景が美しいメインスポットで、マグロ料理で展開する「天家」の高級寿司店の総料理長をやらせてもらっていました。

6年半、思う存分、腕を振るわせてもらいました。楽しかったねえ。当時、島原さんはイケイケドンドンで、「天家」は上海で10数店舗まで拡大し、中国人の間でも評判の人気店になっていた。

 

その彼が、昨年日本に帰国して、また一からマグロで勝負する店を開くというじゃないですか。以前同様、マグロについて口角泡を飛ばし熱弁を振るったすえに、創業メンバーになって欲しいと誘われ、これはもう乗るしかない、と一も二もなく引き受けました。

マグロだけで勝負する。マグロ以外の魚は一切やらない。「鮪のシマハラ」はそんな店です。これは大きな冒険だと思うけれど、もともと私は寿司職人。

マグロのない寿司はあり得ないし、マグロがお代を決めると思っているくらいだから、マグロにはひとかたならぬ思い入れがあります。いいマグロが入ると心が浮き立つ。

今日はイマイチと思えば、それをどう上手くしてやろうかと、奮い立つ。それに、ひとくちにマグロと言っても、本マグロもあればインドマグロも、いまどきはうまい養殖ものもあります。

もっと言えば個体で味が違うのが、マグロの醍醐味。「鮪のシマハラ」は、そんな多様なマグロを一本丸ごと味わい尽くす店にしたいんですね。

 

看板は、もちろん本マグロやインドマグロのトロや赤身ですが、当店で推すメニューはそれだけではありません。

ホホ肉、血合い、さらには心臓や白子といろんな部位の面白いメニューを用意しています。例えば、血合肉のレバニラ風炒めは人気メニューの一品ですが、実はこの料理、社長のアイデアでもあるんです。社長は高知県土佐市に生まれ、マグロ漁師を父にもつ家庭で育ちました。

マグロのありとあらゆる部位を食べて育ったそうです。その記憶と知恵が、マグロの選び方や扱い方だけでなく、メニュー開発にも生きてくるんだね。これは、料理人の私も勉強に
なる。

 

私も負けずにじっくりアイデアを温めて、そのうち、驚くような一品をご披露します。

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